私という人間について

お知らせ

 この度、名興文庫の相談役という立場に就任したのですが、創作界隈においてはいささか闘争心の強すぎる本格ファンタジー論者であり、出来る限り触れない方が良い者、くらいに思われている事でしょう。そして実際のところはどんな人間か分からない人も多いかと思います。

 よって、今回はこの界隈に限らない等身大の私の自己紹介もしておくこととします。

 私は不惑を過ぎてはいるが半世紀は生きていない氷河期世代生まれの既婚男性です。

 ……と、ここから様々な文章を書いては消しを繰り返しましたが、既に数日が経過してしまいました。何かを書く、という工程でこれほどに難しい思いをしたのは人生初かもしれません。というのも、とても波乱万丈かつ経験の濃厚な人生で、自分でも茫漠としていて結局どう書いていいかわからなかったからです。

 遂には考えあぐねてこの困惑を家人に投げかけると『無理もない』と笑われてしまいました。私は出来る仕事とやってきた仕事、持っている知識、そして経験がかなり幅広くなってしまい、一言にまとめると『もしかしたら世界一と言っていいほど面白い人』という言葉しか出てこないのだそうです。

 実際、私の職歴や経歴は荒唐無稽に等しい部分があります。ので、非常に平たく言えば、身体がほとんど動かない状態にならない限り、もう一生仕事や生活には困らない状態に至った、と言うにとどめておきます。

 現在の私は理想的な田舎に家族と共に移り住んでそこそこの年数が経過したところで、分かりやすく言えば『チートスキルを持った人間が忙しさに飽きて、ヒロインと共に田舎に引きこもってスローライフしている』状態です。季節になれば海に潜って海士漁を行い、畑をいじり、野山を探索し、古物をいじり、二つほどの(今回で三つになりましたが)事業者の相談にしばしば乗り、建物をデザインしてはほぼ納期なく改修したり、といった日々を過ごしています。時間に追われず毎日好きに予定を決めて過ごしていくこの状態を自分は『無職』と形容しています。

 自分の人生に関してはほぼなりたいものになり、到達したいところまで来たので満足している……と言いたいところですが、私をここまで冗長性の高い人間に仕上げた要因には無数の書籍、特に幾つかの本格的なファンタジーの影響なしには語れないところがあり、しかしそんなファンタジーが30年ほど前からどうにも良い供給状態ではなくなっているため長く憂慮が続いておりました。

 しかし縁あって出版社の相談役に就任したわけですから、これから物語的には大いに盛り上がるパートのはずです。そうなるように今後は私なりに尽力していく所存です。